この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
石榴(ざくろ)の月~愛され求められ奪われて~
第11章 第三話・弐
「お前さん、大丈夫ですか?」
 お民は源治に事の次第を聞いて、初めて我に返った。よくよく見ると、源治の左眼の縁(ふち)が紫色に変色し、腫れ上がっている。着物もあちこち泥だらけで破れ、薄く血が滲んでいた。
「酷い―、何もここまですることはないのに」
 お民は源治の無惨な姿を見て、涙が込み上げた。 
「なに、俺の怪我はたいしたことじゃない」
 そう言って左手を動かそうとした源治が〝ツ〟と小さく呻いて顔をしかめた。
「大丈夫ッ、お前さん」
 お民は悲鳴を上げて、良人に駆け寄った。
 恐る恐る手を伸ばし、源治の左腕に触れる。
「ごめんなさい。私なんかと関わり合ったばかりに、お前さんには本当に苦労ばかりかけちまいますね」
 涙が、溢れた。
「本当の子でもない龍之助と松之助を心底から可愛がってくれるだけでもありがたいと思ってるのに―」
「馬鹿野郎、こんなときにそんなことを言うな」
 源治の鋭い声がお民の言葉を遮った。
「俺は龍も松も二人とも俺の子だと思ってる。だから、石澤の屋敷にも行ったんだよ」
「そう、でしたね。済みません」
 言うなり、もう耐えられず、お民は嗚咽を洩らした。
「とにかく、明日の朝にでももう一度、行ってみらあ」
 そう言った源治に、お民はそっと首を振った。
「もう、止めましょう」
「―」
 刹那、源治が信じられないといった面持ちでお民を見た。
「あの人、龍之助を連れてった人が言ったように、諦めましょう。龍之助なんて子は端からいなかった。私たちの子は松之助一人だったって」
「馬鹿なことを言うな! 俺たちの子は龍と松、二人揃って初めて当たり前なんじゃねえか。何を血迷ったことをぬかすんだ、お前は」
 お民は泣きながら、源治を見た。
/217ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ