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私達が人間を辞めた日
第8章 儚い指先
「大丈夫ですよ、理佳さん。私平気ですから」
「そんなはずないじゃない...だって...」
「理佳さんだって辛いはずですよ?それなのに私の心配してくれて...やっぱり...お姉さんみたいです」
「泉ちゃん...」
言葉が出ない...まただ...結局今日も...私が励まされてる。
自分が情けない...
「理佳さん...指...出せます?」
「...え?」
突然の申し出。私は素直に鉄格子の端から人差し指を出した。どちらにしろ、この鉄格子からは指くらいしか出せない。
「こっちに伸ばしてください」
「うん...」
指を曲げて泉の檻の方へ...すると、少しして泉の指が私の指に触れた。お互い精一杯伸ばしてギリギリ触れた指。その指にヌルリとした感覚...指を引いて確かめると、クリームのような物が付着していた。
「泉ちゃん、これは?」
「火傷の薬らしいです。理佳さん使ってください」
「そんな...泉ちゃんが使って?」
「まだまだありますから、二人で分けましょう」
「泉ちゃん...」
涙が止まらない...泉の優しさは私なんかには大きすぎる。
それから私達は何度も...何度も...互いの指先を触れ合わせた...