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私達が人間を辞めた日
第16章 絶望の味
「ふふ...ふふふっ...」
自分の親指を舐めながら奇妙な笑い声が洩れる。
涙が枯れたとでもいうのだろうか、最近は泣きそうになると自分でもおぞましい程の笑みを浮かべてしまう。
『...いつか...殺してやる...』
思い出してしまったのは、この部屋から出て行ってしまった4番の言葉。
私は4番と共にこの部屋に拘束され、腕相撲の勝敗で食事が与えられるという日々を過ごした。
最初に思った事は、交互に勝つようにすれば良いという事...しかし、どちらが先に勝つかを考える暇も無く、私語の禁止の為に当然相談する時間も無かった私は、とりあえず全力で4番と勝負してしまった。
大丈夫...これで勝っても次に負けてあげればいい....
そう思いながら手を倒す途中...4番のあまりの非力さに驚いた。結局、なんの危険も無く勝ってしまった私に与えられたパン...
次の勝負...負けてあげようと手を握った私の脳内に、様々な思考がぐるぐると駆け巡った。
負けてあげよう...でも...普通にやれば勝てる...
一日パン一個でこれから生きていけるのだろうか...普通にやれば勝てる...
こんな状況で他人に食料を渡す余裕なんてあるのだろうか...普通にやれば勝てる...
私が...この娘を見捨ても...誰が私を責めるのだろうか...普通にやれば勝てる...
気が付けば...私は4番の腕を倒していた...