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私達が人間を辞めた日
第17章 サヨナラ
「泉ちゃん、落ち着いて?」
隣の檻の泉をなんとかして宥めようと必死に語り掛けた。
泉は先程からずっと...塞がれた口で言葉にならない声を叫び続けている。
その原因は私...残酷な仕打ちを受けた泉を見た私は、怒りのまま作業服の男に何度も暴言を吐き、減点5という死の宣告を受けた。
死ぬのは勿論怖い...でもほんの少しだけ冷静になると、解る事が有る。
それは私が生きている...いや、生かされている意味だ。
おそらく私は泉を弄ぶ為に生かされているだけ...
考えみれば寿の相手もせず、減点の罰以外では泉と共に弄ばれただけというのは、そういう事だろう。
なら私が居ない方が...泉は安全だ。
もう私がこの館から生きて出る事は不可能...ならせめて、泉だけでも...
「泉ちゃん。私の最後のお願い...聞いてくれる...?」
泉の叫びが緩やかに止まる。泉は話せないので私が一方的に話すしかない。
「私が馬鹿だったの。だから泉ちゃんが気に病む必要は無いんだよ?」
当然返事は返って来ない...泉の嗚咽だけが響く中...私はひたすら話す。