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私達が人間を辞めた日
第1章 プロローグ
コツ...コツ...
足音が聞こえる度に思わず振り向いてしまう。これじゃあ私の方が不審者のようだ。
先程の会話の内容が脳裏に浮かぶ...そのせいで後ろ五十メートル程を歩く男の事がやけに気になってしまうのだった。
私の家周辺の道は人通りが少ない方であまり人は見掛けない、そして数少ない人達も直ぐに別の道に進んでいたのだが、後ろの男は結構長い間同じ道をついて来ている気がする。
さりげなく振り向くと男は三人メートル後ろ迄接近していた。なにやら電話をしているようだが視線は私を向いている...気がする。
潜在的恐怖から自然と歩く速度が速まっていたので、いくら男と女の歩幅に差が有るといっても不自然だ...
冷や汗が首筋を伝い、呼吸が乱れる。私は無意識に走り出した。
さっと振り向くと男も走り出していた事が確認でき、声を上げたが辺りには人気が無い...
後三つ角を曲がれば家に着く、その一つ目の角を曲がった途端...軽い衝撃に尻餅を着いた 。
見上げると一人の男が不思議そうに私を見下ろしている。どうやらこの人にぶつかったらしい。
「あの!!えっと...なんか変な人が追い掛けて来てるんです」
起き上がり様謝罪の言葉も忘れ、助けを求めるとその男は私が指差す方向を見る為か私の後ろに回った。
その瞬間...後ろから口から鼻を布のような物で覆われた。
今まで嗅いだ事の無い匂い...意識が...遠退いていく...
それを確認した追い掛けて来る男は走るのを辞め、私を押さえる男と不気味な笑顔で話し掛けた。
この人達...グルだったんだ...
男に持ち上げられた事を意識したところで...私は完全に気を失っていた。