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私達が人間を辞めた日
第7章 妖艶な御下がり
「はぁ...やっと終わった...」
俺は床の消毒液を綺麗に拭き取り、溜め息を吐く。
この部屋は寿が客人を招いて使う沢山の部屋の一つで、自分が掃除当番の日は使用を遠慮して欲しい空間だ。
運が悪い時の汚され方は尋常じゃなく、精液や愛液だけの日も有れば...吐瀉物や排泄物...血痕等で掃除するのに骨が折れる日も有る。因みに今日は運が悪い日だ...
そもそも俺が何故こんな仕事をしているのかというと、一言で言えば身を守る為。
三十過ぎてリストラに合い...やけくそになり宝石泥棒を試みたのだが、頑丈な警備を突破できず、金品を一つも盗めなかったどころか...階段で揉み合いになった警備員を死なせてしまった...
更に揉み合った際に覆面が取れて顔が監視カメラに映ってしまい指名手配されたのだ。
我ながら馬鹿だと思う...
必死に逃亡を続けたが...俺はあっさりと捕まった...しかし捕まえたのは警察ではない...
結局...ここで働くか警察に突き出されるかを迫られた俺に選ぶ権利はなかった。
この年で殺人の罪に問われれば...俺の人生は御仕舞いだ。
他の従業員達の事情は知らない。互いを詮索しないという暗黙の了解の元、皆自分の事は話さず名字しか名乗らない。ほとんどは偽名だろう...俺も偽名を名乗ってるのだが。
しかし、ここの生活も慣れれば悪くない。逃亡生活では三食寝床付き等望め無い...今日は大変だったが普段は比較的楽な仕事をこなしているだけで安全が保証される。
それに...たまにはボーナス代わりの褒美が与えられるのだ。