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限りの月
第9章 記憶の欠片
「や…離して…」

美織は哲からスルリと離れた。

「私…もう寝るから…」
「美織!」

腕を引っ張られる。

「駄目だ、俺から離れるな」

哲はギュウッと美織を抱きしめた。

「ん…苦し…」
「俺の前から居なくならないでくれ…」

(…え…?)

「俺は不安なんだ、お前を感じてないと不安なんだ…」

哲がフッと不安な表情を浮かべる。

それは今まで見たことのない表情で、美織は少し戸惑った。


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