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限りの月
第11章 二人の関係
『……紫苑ッ!?』

携帯電話から聞こえるその名前を聞いて、美織は耳を疑った。

(紫苑? 今、紫苑って言ったの?)

なぜ哲がその名前を……?

混乱しつつも、哲の名を呼んで問いかける。すると、隣に立つフード男が驚いた顔をしてこっちを振り返ってきたので、目が合った。

目にかかりそうな長めの前髪に、少し癖のある栗色の髪、優しい瞳……。

(まさか、あの紫苑?)

そう気づいたとき、紫苑に腕を掴まれた。

「……今の名前……」

「え……?」

「あんた、城戸 哲を知ってるのか?」

「!?」

その時、近くの棚の商品がバラバラと床に落ちた。ハッとして車の方を見るも、哲がいない。通話も切れている。

まさか店内に――と思ったが、どこにもいない。でもなんとなく気配は感じる。

「私……戻らなきゃっ……」

こんな場面を見られたらただでは済まないだろう。



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