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喘ぐなら、彼の腕の中で
第12章 心の傷

資料室に1人残されて
放心したまま、自分の両手を見つめた。
“ なんであの時
俺の手を振り払ったんだよ ”
莉央の言葉が全身を駆け巡り、記憶がぼんやりと舞い戻ってくる。
……失恋をしたあの日、あの時………
再び海に戻ってきてくれた莉央の手を、私は………
「……っ……う……」
手のひらに、あとからあとから涙が落ちる。
私にとっては、衝動的にしてしまったことが
莉央の心に、深く消えない傷を増やしてしまったのだとしたら
「……っ……りお……」
莉央との想い出が、次々と溢れてくる。
あの日以来、ずっと私に触れなかったあなたが
一体どんな想いで私の傍に来てくれたのか
私には、莉央を想うことすら許されない気がして
ただひたすら涙が止まらなかった。

