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喘ぐなら、彼の腕の中で
第12章 心の傷

ドクンと心臓が鳴る。
莉央はまた目を逸らすと、ゆっくりと私から手を離した。
「……莉央……?」
テーブルから体を起こして、彼を見つめる。
莉央は脱いだ上着を手に取ると、静かに口を開いた。
「やめよう、沙月」
「………!!」
「お前は大丈夫だ。 毒は回っていない。
何もしなくても、元の幼なじみに戻れる」
今まで見たことのないくらいの、固い表情。
さっき感じた彼の苦しみや悲しみが
また一瞬にして消えて、見えなくなってしまった。
「……悪かった。
本来は体だけの関係のはずなのに
傷心のお前に付け込んで、色々乱した俺が間違ってたんだ」
「………」
「新しい恋に進めよ。 俺なんか好きになるな。
……沙月には、幸せになってほしい」
莉央は、最後に切ない表情で微笑みを浮かべると
私を残して、資料室を後にした。

