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喘ぐなら、彼の腕の中で
第13章 回想

─── 危篤を迎えた生みの母親から
自分が “ 愛人の子供 ” だと聞いた時も、それほどショックは受けなかった。
都内のマンションから、充分すぎる生活費まで
不倫相手の母親へ、父が莫大な援助をしていたお蔭で、相当いい暮らしをしていたのもある。
何よりも、自分にとってかけがえのない宝物だと、母親はいつも俺のことをそんな風に言ってくれていたから
存在価値があるんだと、子供ながらに安心していたし、寂しさや劣等感を感じたことは1度もなかった。
………だけど
母親が病気で死んで、身寄りが無くなった俺は、当然1人で生きていけるわけもなく
親権は実の父親に移り
本妻とその間に生まれた、2人の兄がいる家の三男となった。
6歳になった俺を、父が海の近くにある豪邸へ連れて帰って
対面した義理の母と、兄弟の顔を見た時に
……その “ 正しい ” 家族を見た瞬間
やっぱり俺も、母親と一緒に死ねば良かったんだと思った。
それでも
世の中、愛人の子供なんてごまんといる中で
俺は、世界で1番不思議で、変で……
優しい家族に、引き取ってもらったんだと思う。
それだけはきっと、間違いがない。

