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喘ぐなら、彼の腕の中で
第13章 回想


『……俺は、殴られなかった』


次は自分の番だと思い、ギュッと歯を食いしばったけど

母は俺に目線を移した途端パアッと明るい笑顔になり、力いっぱい抱きしめてくれた。

続いて2人の兄貴達も
父を横目にゲラゲラ笑って、俺と母の体を囲むように包んできたから


3人の腕の力がキツくて、苦しくて

………暖かかった。


(……ありえない)


何事もなかったように、食卓へと招く3人を見つめる。

愛人の子供だぜ?
腹違いの弟だぜ?

……本当は、その笑顔の裏では俺の事を憎……


『当たり前だろ!!』


急に父が、物置きの中から立ち上がって叫んだ。


『なんで莉央が殴られなきゃいけないんだよ!
お前は何も悪くない!!』

『……そりゃ
俺を作ったあんたが1番悪いとは思うけど……』


……父親ってこんな感じなの?

見た目と中身のギャップが激しすぎ………

俺が呆気にとられて無言でいると、父は俺の頭をぐりぐり撫でて笑った。


『莉央は俺達の大切な息子だ。
莉香(りか)の分まで、父さんが一生かけてお前を守るからな』


死んだ母親が一番好きだと言っていた、少年のような笑顔を見て

言いたいことはいっぱいあるはずなのに

なぜか俺もつられて、頬が緩んでしまった。





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