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喘ぐなら、彼の腕の中で
第13章 回想



* * *


『莉央! 夏休みだからっていつまで寝てんの!
翔太!あんたは今日プールでしょ!』


乱暴に布団を引っくり返されて、体が床に転がる。
その俺の上に、母親に蹴っ飛ばされた兄貴が落ちてきた。


『ぐぇっ!
いってぇな! ふざけんなバカ兄貴!』

『俺だって痛ぇよボケ!
だいたいなんで未だに莉央と同じ部屋なんだよ。
余りまくってんじゃん!』

『小6と小3の分際で文句言うんじゃないの。
一翔みたいに、中学生になったら分けてあげるわよ』


母親はしれっとして布団を抱えると、そのまま鼻歌を歌いながらベランダに出て行った。



─── 俺がこの家の家族になってから、3年が経ったけど

母は俺に対して良くも悪くも、特別扱いをすることはなかった。

兄貴達と同じように殴られるし、叱られる。
その分、思いっきり褒めてくれる。

男勝りで何もかもが豪快な母は、いつも笑顔を絶やさない。


だから小学校に上がった時
『母さん』と、自然の流れで母を呼ぶことができた。

その時も窒息しそうなくらい抱きしめられて

『莉央大好き会』と題された母主催の祝賀会に
近所の人は、意味も分からないまま参加させられた。


……母が笑うと、自然と周りも笑顔になる。

1番上のカズ兄も2番めの兄貴も、バカみたいに俺に構うから
父が仕事でほとんど家に帰らなくても、この家は常に騒がしくて賑やかで


……夜になると

亡き生みの母を思い出し、苦しみに襲われるけど

昼の間は孤独を忘れることができた。




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