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喘ぐなら、彼の腕の中で
第13章 回想

“ 愛せないじゃなくて
愛したらいけないって、思ってる ”
………沙月。
お前は俺のことをよく理解しているな。
最初はそうだったんだ。
完璧に仮面をかぶったつもりだったけど
結局は寂しさを埋める為に、誰でもいいから心を繋げたくて体を求めてた。
だけど、今は………
「……解毒剤
どうしたら手に入るんだよ」
………偽り続けた心は
いつからか本当に機能しなくなってしまった。
身体中を蝕んで、血の代わりにその液体が今の俺を作り上げている。
人に感謝されても気持ちを伝えられても、嬉しさや喜びといった感情が生まれない。
“ 人を好きになって、いいんだよ ”
……きっと、俺が1番誰かに言って欲しかった言葉。
確かに、何かが自分の中で変わろうとしているのが分かるけど
─── あの日
沙月に振り払われた手の感触が、まだこんなにも残っているから
27になっても臆病で、愛の無い自分に慣れてしまった俺は
どうしてもその一歩を踏み出せないままだ ───

