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喘ぐなら、彼の腕の中で
第16章 先手必勝


電話を切って車のドアを開けると、助手席のドリンクホルダーに飲み物が入っていた。

少し離れた場所にあるカフェの、テイクアウト用カップ。
甘いラテで、キャラメルフレーバーの良い香りが漂う。


……缶コーヒーじゃないところも含めて
こうしたさりげないところ、やっぱりズルい。


「……/// ありがとう」
「で、どこ行くんだよ」


自分のコーヒーを飲みながら、莉央はぶっきらぼうに言い放つ。


「………」


“ 引き返される可能性あるから。
いきなり実家だなんて言うなよ ”


翔ちゃんの助言を頭の中でリピートしてから、私は口を開いた。


「海よ」
「……は? 海?」
「そう、久しぶりに地元の海が見たい」


なんて、実はこの前行ったばかりだけどね。
私の言葉を聞いて、莉央は怪訝そうな顔をする。


「この時期まだ泳げねぇし、しかもなんで地元なんだよ」

「いいから。早く出して」

「お前…」

「今日は私のワガママ全部聞いてもらうから、宜しくね」


写真が入ったバッグをチラッと見た私。

再び溜息をついた莉央は、諦めたようにアクセルを踏んだ。




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