この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
喘ぐなら、彼の腕の中で
第16章 先手必勝

電話を切って車のドアを開けると、助手席のドリンクホルダーに飲み物が入っていた。
少し離れた場所にあるカフェの、テイクアウト用カップ。
甘いラテで、キャラメルフレーバーの良い香りが漂う。
……缶コーヒーじゃないところも含めて
こうしたさりげないところ、やっぱりズルい。
「……/// ありがとう」
「で、どこ行くんだよ」
自分のコーヒーを飲みながら、莉央はぶっきらぼうに言い放つ。
「………」
“ 引き返される可能性あるから。
いきなり実家だなんて言うなよ ”
翔ちゃんの助言を頭の中でリピートしてから、私は口を開いた。
「海よ」
「……は? 海?」
「そう、久しぶりに地元の海が見たい」
なんて、実はこの前行ったばかりだけどね。
私の言葉を聞いて、莉央は怪訝そうな顔をする。
「この時期まだ泳げねぇし、しかもなんで地元なんだよ」
「いいから。早く出して」
「お前…」
「今日は私のワガママ全部聞いてもらうから、宜しくね」
写真が入ったバッグをチラッと見た私。
再び溜息をついた莉央は、諦めたようにアクセルを踏んだ。

