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喘ぐなら、彼の腕の中で
第16章 先手必勝


少し窓を開けて、外から吹き抜ける風を感じる。

前にテーマパークに行った時と違ってほとんど喋らない私を、莉央は不思議がっているようだ。

それでも、精神を集中している今の私に世間話など出来ない。



─── 昨日の夜、会社の帰り道。


“ 仮面にはヒビが入った程度。
歪んだ心は治療できずに様子見。
それでも微妙に進展した気がする ”


近況として翔ちゃんにメールを送ると、すぐに折り返しの電話がかかってきて

進展した褒美とか何とか、意味不明な理由で
………莉央にとっての、2人のお母さんの話を教えてくれた。


私が知ってるおばさんは、もちろん義理のお母さんになるわけだけど

血とか関係なく、莉央のことを心から愛してるんだってことが、翔ちゃんの話を聞いただけで分かったんだ。


………そして

莉央を見ていると、きっと愛情を全面的に受け入れてないんだなって………なんとなく、そう思ったの。


というよりは

受け入れちゃいけないって言い方の方が、正しいかな………





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