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喘ぐなら、彼の腕の中で
第17章 この手を、もう一度

莉央は手を止めて、再び海を見つめる。
「柄にも無く嬉しいんだ。
母さんと兄貴が俺に……幸せになってほしいって言ったから」
「………っ」
「墓参りで泣いた時も同じだったって。
……涙を見た瞬間は、あの日に戻ったみたいに感じたけど
今は、素直に家族の想いを受け入れられた気がする」
………莉央………!
全身が震えて、私は莉央を食い入るように見つめた。
……届いた。
莉央の心に、お母さんと翔ちゃんの気持ちが届いたんだ……!
嬉しい……!
こんなに嬉しいことってないよ……!
「……顔、崩れてるけど」
「だ、だって……っ」
涙を堪えてるから、顔がくしゃくしゃになってると思うけどもうそんなのどうでもいい。
莉央が心を見せてくれた。
それだけで私の心に幸せが満ちてくる。
「……沙月」
思わず目を伏せた私の上から、莉央の声が降ってきた。
「お前、毎回こんな気分になってるわけ?」
「……え!?」
な、なになに!?
どんな気分!?
再びバッと顔をあげると、莉央は少し不機嫌そうに私を見た。
「誰かに惚れる度に、こんな破裂しそうな気持ちになるのかよ」
「………!」
「スゲーな。 ある意味尊敬する」

