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喘ぐなら、彼の腕の中で
第5章 忘れさせて

『沙月、今どこにいる?』
「……えっ?」
『どこだよ』
「あ、ぎ、銀座……」
……戸惑ったのは
予想に反して、莉央の声が優しくなった気がしたから。
『今まだ会社にいる。タクシー代出すから乗って来いよ』
「……へっ? で、でも…」
『もしかして足震えて歩けない?』
「……!」
『それなら迎えに行くから、場所教えて』
………どうして
どうして分かったの……?
壁に片手をついて支えないと、立っていられなくなっていた私。
腕時計を見ると、もうすぐ夜の11時になろうとしている。
「……仕事中でしょ?
こんな時間まで…」
『お前が来るまでに終わらせるから。
いいから早く来い。 1人で泣くな』
「……!」
莉央の言葉に、ドクンと心臓が鳴る。
……私の目に涙はない。
「な、泣いてないわよ…」
『泣いてるだろ、心で』
………!
『かっこつけすぎなんだよ、アホ』
「……っ」
『俺の言う通りにしろ。
その目から溢れてくる前に、止めてやるから』

