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喘ぐなら、彼の腕の中で
第6章 ベストを尽くせ

「それでね、夜は満点の星空が見えたの♡」
─── 5月3週目の金曜日。
爽やかな風が吹き抜ける、会社の屋上。
私はもうすぐお昼を食べ終わるというのに、亜美のお喋りは止まらない。
「露天風呂付きの部屋だとは思わなかったから、2人で何回も入っちゃったんだ♪
芹澤さんはね、長風呂が苦手だからあたしよりも先に……」
・・・まいったな。
この感じだとまだ続きそうだ。
笑顔を作って相槌を打ちながらも、心の中で溜息をつく。
……身を引いたのは事実だし
一度決めたことに対してグダグダ悩まないのが、自分の性格ではあるけれど
芹澤さんとのノロケ話を笑って聞けるほど、心の傷は癒えていない。
だから何かと理由をつけて、会うのを断っていたのに
金曜日の今日、ついに私の席までお迎えに来られてしまった。
「GWだから混んでたけど、2人でゆったりした時間を過ごせたの。
芹澤さんも楽しいって、喜んでくれてたわ♡」
そりゃ楽しかったでしょうね。
カレンダー通り連休が取れたんだから。
あなたの彼氏がしっかりお休みされたお陰で、私は後半ほとんど現場で仕事をしていました。
「……はぁ…」
あ、やばい。
ほんとに溜息漏れちゃった。
あの時は何も考えず、どうぞどうぞ休んでください♡って、笑顔で了承したんだよね。
……今ではこんなにも後悔してるなんて
1ヶ月前の私は夢にも思っていないだろう。

