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喘ぐなら、彼の腕の中で
第6章 ベストを尽くせ


“ 什器 ” というのは、商品やカタログなどを陳列・設置するための器具……いわゆる土台みたいなものだ。

通常は専用の会社からレンタルするんだけど、今回は形から色まで全て私が決めていた。

カフェで使用する食器や、ショップで販売している雑貨が引き立つように
強化ガラスを使った、L型のモダンな陳列シェルフ。


……つまり
オリジナルだから、他に代替えが無い。


「芹澤は、仕方ないから従来の什器で良いって言ってたよ」


血の気が引いて放心する私の頭を、先輩がポンポンッと軽く叩いた。


「幸い、使い回しできそうヤツが新宿店にあったらしい」
「……」
「すぐに移動してもらうように手配してくれるってさ」


……プレオープンは今夜7時。

開始時間を遅らせるわけにはいかないし、ショーウィンドウは直接関係が無いから、そこまで大した問題でもない。


だけど

華やかな青山通りの路面店とだけあって、店の入口に構えるショーウィンドウには、準備段階から特に力を入れてきた。

制作に時間がかかってしまったけど、当日には間に合わせるからねって、先方の担当者も協力してくれて

店員の女の子達とも、通りのお客様の目を引くようなディスプレイにしようねって、打ち合わせしてきたのに………



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