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水は低きに流れる
第2章 嫌がらなくて
こんなカッコいい人が私なんか相手するなんて・・・。


「ん?」

「あ、いえ・・・」


裸のままくっついて、岩崎さんの持ってきた音楽DVDを見ている。

岩崎さんが後ろから抱きつくようにして、背中に体温を感じる。

なんか、こういうの久しぶりで気持ちいい・・・。




元夫はすごく優しい人だった。

誰にでも優しい人というべきかもしれない。

早く実家を出たかった私は、憧れだけで結婚した。

若かったんだと思う。

出張が増えて家を空けることの多い夫を信じ切ってた。

そして、離婚。

別れようと言われて、ああそうなんだって思った。


悲しくも悔しくもなかったけど、一度知ってしまった人肌と一緒にいる心地よさは1人になると寂しいって嫌でも思うことがある。



「もっと、くっついて」



腰に手を回して体が密着するくらい引き寄せられる。

髪に口元を埋めてられて、なんだかくすぐったい。


「お前さ、何でも受け入れそうだよな」

「へ?」



抱きしめてた腕に力が入って、髪の毛をかき分けて耳元で囁く。



「俺な、お前みたいな子を調教するの好き」



ぞわぞわとして、言ってる意味がよく分からない。


「それ・・・って」



聞き返せば良かったのに、テレビの画面に好きなMVが流れ始めて、さっきの発言がなかったかのように話題が変わった。



「あ、このMVの感じが好きなんだよな」

「私も好き」

「いいよな」

「うん」


好きな物の好みが似てて、こうして共有するように話すのも、今まで周りにいなかったような気がする。

ちょっと、こういうのいいな。

でも、さっきの言葉がなんとなく引っかかった。

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