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覚醒
第3章 2人の事情
男たちは賭けをしていたのだろう。いや中には女の声もした。
「健二!男は顔だけじゃないよ!」

大きな笑い声とはしゃぐ男女の声がした。

クレアも山下と同じに今日一日の出来事を考えていた。
山下の土下座のこと、タクシーの中の暴言・・そして村田のこと。

タクシーの中で振り返った時すでに村田の姿はなかった。

【別の女・・】きっと今頃村田は別の女をだいている。【放置プレーかよ・・】
クレアは考えた。
【こんな事続けてても幸せにはなれない・・】
【幸せってなんなんだろう?】
女子中学生のような事を考えクレアはまたウイスキーを一気に飲み干した。

【山下のやつ土下座して勃起してたな・・・】
【勃起するってことは興奮してたの?】
【山下は私に土下座させられて興奮してたの?】

そういえば・・クレアは高校生の時を思い出した。

学校の先輩を土下座させた時、妙な快感があった。
土下座する先輩に必要以上に責め、なじり、興奮し、仲間の一人が行ったセリフ・・

「こいつ裸にしちまおうぜ!」

その時先輩の友達が止めに入った。クレアとその仲間は捨て台詞を吐きその場を後にした。

あの時・・クレアは思った。異常なまでに興奮し、先輩の友達が止めに入らなければクレア達はその土下座する先輩の服を剥ぎ全裸にしただろう。
止められたから我に返り理性が働き立ち去ったが、興奮していたことは間違いない。
物を盗まれた怒りだけではない。何かがクレアを支配していたこと。

【人って怖いな・・】クレアは思った。

異常な現実に遭遇した時人間は異常な行動に出る。
山下はそれが股間に現れ、勃起して、興奮していたのであろう・・・そう思いまたクレアはウイスキーを一口飲んだ。

「ここよろしいですか?」不意に話しかけられた。
クレアは怪訝そうに声の方を見ると初老の夫婦だろうか、男は痩せ細り色が白いく無精ヒゲを生やしにこやかに妻であろう女性と立っていた。
「ごめんなさいね、いつもここの席なの。」と言いクレアに話しかけた。

「大丈夫ですよ。どうぞ。」クレア言った。

初老の夫婦は病院の悪口、看護婦の悪口を微笑み、冗談を交えつつ話している。

クレアは聞き耳をたてウイスキーを飲んでいた。

不意にその初老の女性がクレアに話しかけた。

「あなたちょっとだけよろしいかしら?」

クレアは戸惑いながら「はい。大丈夫ですよ。」
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