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吼える月
第5章 回想 ~終焉そして~
「よかった!! お前を探してたんだ!!」
「シュウ、なんで餓鬼が……」
「お前が抜け道に走った直後、外から金色の男が餓鬼を連れて現れたんだ。あの男、不可思議な力で部下達の首を一瞬にして刎ねたんだ」
サクは目を細め、ユウナはサクの首筋に抱きつく。
「そして餓鬼共が雪崩込んだ後……あいつ、消えたんだ。きっと屋敷のどこかにいるかも知れねぇから、気をつけ……」
「もう遅いわ……」
ユウナが無気力に言った。
「皆皆……殺されてしまった。あの金の男に、父も……リュカも……」
「祠官も、リュカ様も!?」
サクはユウナの表現にあえて黙っていた。
ユウナの中で、リュカは死んだと思うことで、精神が保たれるのなら……それでいい。意味は同じ、自分達が知るリュカはもういないのだから。
「サク、餓鬼がうじゃうじゃ増えているんだよ。増殖している。警備兵は全滅だ。俺も命からがら……ってとこなんだ。すまない、俺……お前の代わりに部下を守れなかった……っ!!」
涙声で頭を下げるシュウに、サクは言った。
「謝るのは俺の方だ。酷なことをお前に押しつけたんだから。だけどお前だけでも生きていてよかった」
「サク……」
「シュウ、ここはひとまず逃げよう。ここで親父待つには危険すぎる。とにかく屋敷の外へ。正門は駄目だ。他に道はあるか!?」
「餓鬼が食い破った壁の穴がある。こっちへ……」
シュウに案内された場所は、ようやく人間ひとりがなんとか抜けられるくらいの小さな穴だった。三人となれば、時間がかかる。
視界の至る処には餓鬼がいる。
そして、この壁の向こう側に餓鬼が居ないとも限らない。
サクが頭を突っ込んで見る限り、壁の外に気配はなかった。
「よし、姫様。まず抜けて下さい」
「あたしは……」
「……あっち側に放り込みますよ?」
「……はい」
急に素直になったユウナが、壁の穴から外に出た。