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吼える月
第26章 接近
「了解! ユウナちゃんの切ない心をちゃんとユエ、サクちゃんに渡すから。早く帰ってくるからね、ユエの"お友達"はお利口さんだから」
「お友達?」
「うん、この子達。この子達は強いから、サクちゃん"達"をここまで運んでくれる。船よりずっと速く!! そうだよね、皆!?」
"この子達"は、大空で大きく翼を羽ばたかせた。
ユエは、ただの子供ではない。
自分達を助けられる力を持つ者達だ。
判断を間違えるな。
ユウナは、サクを迎えにいくという言葉の裏、早く会いたい気持ちが募っている心を静めて、自分に言い聞かせる。
「ユエちゃん、信じるわよ!?」
「信じて信じて!?」
嬉しそうに喜ぶところは、本当に子供なのだけれど。
「ユウナちゃん、これだけは覚えておいて」
ユエは笑顔を消して言った。
「真実とは、目で見えて耳で聞こえるものだけとは限らない」
「え?」
「きっとまもなく、意味がわかる」
「なんのこと?」
「言ってきまあす!! 早く、サクちゃんに大好きって伝えてあげてね」
ユウナの質問には答えず、ユエは大勢の熊鷹を連れて飛んで行ってしまった。
「どういう意味かしら……?」
海に向かって下降するユウナの呟きに、女はなにも答えなかった。
その顔に、悲哀に満ちた色を濃く浮かべて。