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吼える月
第26章 接近
「ユエの笛で餓鬼の動きは一時的に止まったよ。あとは選手交代だけ」
「え?」
「ユエがサクちゃん連れてくる」
「そんな!! あたしでも行けないところに……まさか!!」
ユウナは自信たっぷりに言ったユエが、子供独特の無邪気な思いつきでは無い可能性を見いだした。
「まさか、あなたは……、真実の青龍殿に行けるの?」
「うん!!」
ユエは嬉しそうに、何度も強く強く頷いた。
「ユエは必ずサクちゃんを連れて帰る。だからユウナちゃん、その子とふさふさイタチちゃんのところに行って? サクちゃんの耳飾りで、イタチちゃんの苦痛も少しは和らぐ筈だから。あとはその子に任せて」
その子…とは、自分を抱える女のことだろう。
「任せてっていっても……」
この女には、神獣の力が使えるとでも?
「その子は、ユエみたいに浄化の鈴を持っているの。だから大丈夫!! サクちゃん来るまでには、ユエも合流するから」
「ユエちゃん、あたしも一緒に……」
「駄目」
ユエは、その顔に不似合いにも、厳しく言った。
「イタチちゃんの苦痛を和らげるのは、ユウナちゃんにしか出来ない。サクちゃんを迎えにいくことは、ユエでもできる。わかるね?」
それは否定出来ない程に強い語気だった。
「だけどユウナちゃんの心は連れて行って上げる。ユウナちゃん、ユエはなにを伝えればいい?」
ユウナは即答した。
「サク、早く会いたい……」
祈るように胸の前で両手の指を組み、恋心の告白のように絞り出すような声を出して。
会いたくてたまらない、大好きなひとに、一刻も早く会いたいと。