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吼える月
第27章 再来
あの時とは違うのだ。
リュカと婚姻することを楽しみにするほどにリュカに惹かれていた事実があっても、いまだ裏切られたリュカを憎みきれないほどに執着していても。
――姫様の武神将です。
今、心にはサクが居る。
「サクを裏切りたくない……」
サクに、リュカに裏切られた自分と、同じ気持ちを味合わせたくない。
「サクに嫌われたら、生きていけない……っ」
リュカは動きを止めて、泣きじゃくるユウナを見ていた。
「……揺るがないね、サクへの心は。僕のことは忘れていけるくせに……」
零された言葉にも、深い翳りに覆われた顔にも気づかず、ユウナはサクを想って泣く。
それを制したのは、唸るような低いリュカの声だ。
「だったらサクは悲しむだろうな。長年の想い人が、こんなに簡単に……別の男を受け入れる淫乱女と知ったら」
持ち上げられたユウナの足。
その意味を本能的に悟ったユウナは、顔色を変える。
「やだ、やめて、リュカ、やめて!!」
「さあ、思いきり泣き叫べ、ユウナ!! 僕を憎め」
「サク、サク、サク――っ!!」
「僕と同種の力を持つサクは、ここには来れない。お前の異変も気づけない。
さあ、婚儀の前夜のやり直しだ。
……心を繋ぐ必要はない。身体だけだ。それだけでお前は僕のものに……」
無理矢理にリュカがユウナの下着をずらして、横から己自身を――。
「いやあああああああああ!!」
「離れよ」
リュカを止めたのは、
「興ざめだ、リュカ」
気怠げな様子で不機嫌そうに現れた、金に包まれたゲイだった。