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吼える月
第29章 変現
「待て待て、青龍。なにを言い出す! テオンはこの国の祠官……」
「我は認めておらぬ。テオン、汝は試練を受ける覚悟だと我に言った。ならば、見事炎鳥の涙を手に入れて、玄武を助けてみよ。それが祠官と認める条件だ」
「ちょ……」
「やる。やります! お兄さん、頑張ろうね。僕、お兄さんと一緒なら、不可能なことはないように思えるんだ」
「簡単なことじゃねぇんだぞ、お前は蒼陵統率しないと……」
「青龍に認められないとなにも出来ないよ、僕の目指すのは、皆と青龍が仲良く共存できる国だもの。それにここには、青龍に認められている武神将がいるんだ。僕の留守くらい守ってくれるさ、10日間ほどのことならさ。そうだよね、ジウ?」
「う、うむ…。それがテオン様の命となれば、このジウ従いまする。蒼陵には青龍もおることですし……」
「ほらね」
「おいおい、蒼陵は今が大切……」
「僕はイタチちゃんに、皆を助けて貰った恩がある。お兄さんはイタチちゃん、助けたくないの? 蒼陵に僕が居る方が大切?」
「~~っ」
「諦めよ、玄武の武神将。玄武の復活は我も望んでいる。盟約により、我は介入できぬ。ならば、我は……この者を遣わす」
テオンを認めていないといいながら、テオンだからこそ、サクの手助けになると寄越そうとする青龍。
だから――。
「わかった! 少しテオンを借りる!」
正直サクには、聡明で知識があるテオンの手助けは歓迎なのだ。
イタチを助けるための難題に、辟易していたのだから。
サクは、テオンにこっそり言う。
「姫様とのこと、邪魔しないでくれよ」
「勿論! 僕がこの姿になった期間以上も、報われずにいる可哀相なお兄さんをの恋路を邪魔しないよ!」
せっかく声を潜めたのに、戻ったのは大きな声。勿論テオンの故意だ。
その場に居たものは、一斉に笑った。
サクは……
「これからだよ、これから!」
真っ赤な顔でむくれてしまった。
「ちくしょう……。隣国にまでばれちまったじゃねぇかよ……」
……既にジウが、ハンから色々とサクの報われない恋路を、事細やかに聞いていることを知らずに。
「サク殿とテオン様が行かれるのなら、相談があるのだが」
サクは、神妙な顔をするジウに、耳を傾けた。
「……シバのことだ」