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吼える月
第6章 変幻
あたしの生きる意味はなに?
餓鬼になって無益な人間を殺さぬようにと命絶つことすらできなくなった自分は、餓鬼のいない今、なにも制約されることはない。
穢らわしい魔物は、還るべき場所がある。
それはこの世界ではない。
視界の一部に、サクが持っていた……近衛兵より奪った刀が見えた。
だからユウナは――。
「させるかよっ!!」
だが動きにおいてはサクの方が上手だった。
その両手はユウナを落ち着かせようと彼女の双肩を掴んでいても、無気力だったユウナの瞳に走った怯えを落ち着かせたのは……自分が置いた刀に視線を向けたからだと悟り、ユウナの手が刀に伸びる前に、刀を大きく手で払ったのだった。
刀は壁に突き刺さる。
「姫様の頑固さは十分承知です。だけど俺も姫様以上に頑固で執拗なんですよ。……死ぬことは許しません。俺が絶対に!!」
「どう……して? サク……見てたでしょう?」
ユウナの声が悲痛さに嗄れた。
「あたし……サクに護られるような、綺麗なお姫様じゃないの。見てたでしょう? 前からも後ろかも……っ、蔑んでいたでしょう? 陵辱されたあたしなど……」
「俺を勝手に"ひとでなし"にしないでくれませんかね、姫様」
サクの顔は冷ややかだった。
「俺は……頭は馬鹿ですが、なにが綺麗でなにが汚いかなど、真実くらい見通せる力はあると思っています。
その俺が言います。姫様は……汚くなんてありません。穢れてなどいません。どこまでも姫様は、綺麗な俺の姫様のままです」
「出任せはやめてよっ!! あたしは……っ!!」
ユウナは泣きながら、服を脱いだ。
サクの目の前で、惜しげもなくその艶めかしい輪郭を描く全裸を。
破瓜して女になったその曲線は、ますます妖しげな艶香を醸すようになったと、サクは思った。
「あたしが綺麗だというのなら、よく見てよ!!」
くらくら。
眩惑の銀髪に煽られ、サクの理性が揺すぶられる。
情欲の炎がその瞳にちろちろと揺れ、サクの喉仏が上下に動いた。