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吼える月
第6章 変幻
 

 だがサクは、ユウナから目をそらして、欲情する心を必死に鎮めた。 

 それでなくとも凌辱されているユウナをみながら、欲情してしまったという後ろめたさがあれば、殊更ユウナを直視出来なかった。


 山賊を討ち取った時、震えていたユウナを思い出す。

 今もユウナは震えている。


 ユウナはなにひとつ変わっていないのだ。


 そして、痛ましい心身を投げ打ってまで。 

 ここまでユウナに無理をさせてしまったのは――。


「ほら、見れないでしょう!? それが答えよ。だけどあたしは怒っていないから。それがひととしての当然の……」


「……俺のためでしょう?」


 悲哀に揺れたサクの瞳が、ユウナの瞳に絡んだ。


「俺のために姫様は体を張った。死にたいのは……」



 そしてサクは叫んだ。



「――俺の方だっ!!」



 その目からは、痛恨の涙が零れた。


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