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吼える月
第29章 変現
 


 女性経験がないサクには、愛を込めて女体を愛でれば、その身体が"女"として開花されることに気づいていなかった。

 ユウナを愛しているから、ユウナの心ごと身体を愛していただけ――その一方的な単純な理屈が、快感に目覚めた女体の反射的生理反応を理解するまでには至らず、ユウナがリュカに反応したのは、彼女の…リュカへの恋心ゆえとしか思えぬサクの心は、闇に囚われ始める。


 ユウナがリュカを選んだあの日から、ユウナを幸せにすると自分に誓ったリュカの姿が、サクの中で燻ったままだった。

 そのリュカは、ユウナを裏切りながらも、ユウナを助けている。

 それも、サクには出来ぬ方法で、だ。

 思い返せば、いつもリュカは、女心に疎く不器用なサクより先に動いて、ユウナを喜ばせていた。いつもいつも、リュカはユウナの隣で微笑んでいた。

 リュカも、愛を持ってユウナの身体を愛で、ユウナからそれを許されたのかと思えば、ユウナからの愛を得られていないと思うサクは、やるせなくなってくる。


 リュカなら、ユウナを譲ってもいいと思った自分。

 だが今、リュカだから譲れない自分がいる。

 それほどまでに、ユウナが欲しいのだ。


 リュカも触ったのか。

 ユウナの……この、魅惑的な花園を。

 溢れる蜜を掬ったのか、祠官を殺したその手で。



 苛立ちながら、サクは、ひくつくそこに舌を這わせた。



「ひゃ……」



 ばたつくユウナの足を両手で押えながら、嫉妬に狂いそうな彼の荒々しい胸の中を、滑らかにかき混ぜるように、舌でぱしゃぱしゃと音をたてて、蜜で潤う秘裂を上下に激しく動かす。


「ひゃあんん、んんっ、サク……っ」


 リュカもこの悩ましげな声を聴いたのか。

 こうしてユウナの深層を暴き、その指で、その唇で、その舌で。


 ソウデキルケンリハ、オレダケデハナイノカ。
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