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吼える月
第29章 変現
だから、自分のただの取り越し苦労なのだとの言葉を聞きたいのだが、ユウナがリュカとのことを話したがらないところに邪推してしまい、ユウナの口から出る言葉に臆して、聞き出せない
"濡れた"以外にも、もっと進んだ事実が出てくるのではないかと。
誤魔化されたい。
誤魔化されたくない。
その狭間で揺れるサクは、苦渋の色を顔に濃く出させながら、自らが作り出す忌まわしい邪念と戦っていた。
ユウナとリュカが、歓喜の声を上げながら心も身体も繋げて、愛おしげに抱き合う姿を。
それは、サクがずっと怖れていたものだった。
婚儀の前夜、それが実現してしまうことが嫌で、吐き続けてしまったくらいの。
そうであって欲しくない。
自分の気持ちを伝えた今、違う未来を歩みたい――。
サクは、ユウナの蜜壷の入り口を触っていたその指を、つぷ…と、蜜壷の中に差し込んだ。
「ぁ……」
蜜で溢れるそこは、サクの指を深く呑み込んだ。
ぬめりある熱い蜜に誘われるように、ゆっくりと指を動かすと、ユウナの狭まったナカが喜悦に蠢き、サクの指をきゅうきゅうと締め上げた。
錯覚してしまう。
今と同じ"治療"という目的で、ユウナと繋がったあの瞬間を。
恋心を禁じられても、愛おしいと思ってしまった、あの瞬間を。
そして今、こう思ってしまうのだ。
リュカも味わったのではないかと。
「ここ……リュカの指、挿れられたんですか?」
「違……」
すぐ返った否定の言葉に、内心ほっとしながらも、サクは訊く。
「だったら、なんで"濡れた"んですか、姫様」
「……っ」
ユウナの心にいるのは誰か――。
自分ではないと思うサクは、悔しさに歪んだ顔をしながら、ユウナに言った。
「俺が……リュカの痕跡をすべて消します」
蜜壺にある、中指の抜き差しを早めて。
「姫様が感じるのは……俺だけになるように……」
引き下がる気は、サクにはなかった。