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吼える月
第29章 変現
 


「サク……っ、ぁああっ、サク、サク、だ、あああ…っ」


 "サクだけ"

 そう言いたいのに、強まる刺激にユウナの口が上手く回らない。


「リュカではなく……俺を感じて下さい」


 切実なその声は、泣いているようにもユウナには聞こえた。


「姫様……っ、俺が……いますから!」


 そうとしか言えないサクは、秘粒に舌を這わせて、指を増やして蜜壷に深く抽送させた。

 蜜が飛沫を飛ばす。

 赤く充血した粒を舌で捏ねる様を見たユウナが、恥じらって顔を背ける。

 サクは口淫を続けたまま、距離を広げようとするユウナと、繋げたままの手を引くが、ユウナは目をつぶろうとしてしまう。

 サクは握ったままの手で、ユウナの後頭部を支えるようにして上体を起こさせ、ふたりの距離を縮めようとした。思わず目を開いたユウナに、至近距離からサクは、強い意志を宿した目でユウナを縛る。


 自分を見ろと。


 ふたりの距離は、拳ひとつ。


 男の情を目に滾らせたサクと、羞恥と快感に艶めいた眼差しを向けるユウナの視線がぶつかり、魅入られたかのように視線を長く絡ませる。


 サクは、自分の愛撫に喘いでよがるユウナの唇を見た。

 ユウナは、自分のを愛撫するサクの唇を見ていた。


 手だけではなく、重ねたいと思った。

 言葉を伝える部分を――。


 だがそこから目をそむけたのはサク。

 彼女は、リュカへの想いを吐露したいのだと、勘違いしてしまったのだ。


 それを知らずに、ユウナは快感の最中にサクへの愛情を強めていた。

 治療ではなく、愛する相手に、愛を伝えて愛し合いたい――。


 ユウナは……伝えたくなった。

 リュカではなく、サクが好きなのだと。

 前のように、抱き合うことで……愛おしくて泣きたくなるような、あの熱を得たいと。

 ……痛みが酷くなっても、サクに伝えたい。サクに……あの燃えるような目で愛されたい。好きだと言われたい。


 両想いの喜びを感じたい――。


 戦慄くユウナの唇が、ゆっくりと開く。


「サク……あたし……」


 サクは妖艶な眼差しを向けながら、ユウナの羞恥を煽るように、粒を舌で揺らす。


「あたしがっ、好き、なの…は……」


 サクの目が苦しそうに伏せられ、眉間になにかを堪えるような縦皺が刻まれた。
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