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吼える月
第30章 予感
表と裏――
ふたつの思惑が同時進行して、廃れかけていた蒼陵国。
子の無事を願う親の思いが、神獣を動かした。
ユウナは知らない。
ジウが密やかに、なにを託したのか。
なぜサクの別れ際の"約束"に、言葉で返さなかったのか。
そして青龍も同じく。
「神獣の免罪方法」など、盟約に触れるものを、なぜ簡単にサクに教えたのか。
……なぜふたりは、ゲイの対抗手段となるサクに、シバと玄武をサクに託して蒼陵から出させたのか。ゲイがすぐ再来するだろうことを予期していて。
それは本当に、玄武の救済だけを目的にするものなのか。
「イタ公ちゃん、さあ…すぐに元気になるからね」
人と戯れることが好きな神獣。
だがその神獣の異変は、同胞たる神獣しか感じ得ない。
倭陵の他のふたつの神獣は、感じていた。
目覚めたばかりの青龍の、命の危険性を。
神獣が滅ぶなど、ありえない危機が起るのだと。
そして――。
四神獣の均衡が崩れたことで、起きえる最悪な事態の到来がもうまもなくであり、自分達もその危険に晒されるであろうことを感じ取り、神獣達は警戒に険しい目をして、大きく武者震いをした。
ユウナも、サクも……
この先に待ち受けるものを、まだ知らない。
【第二部 青龍編 完】