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吼える月
第31章 旅路 ~第三部 朱雀の章~
  

――そんなの気にするイタ公じゃねぇですよ。気にしてたら、まず俺が真っ先にやられるでしょうし!

――……お前は馬鹿だから、玄武も諦めているだけだ。

――シバ、やめなよ! 幾ら本当のことでも、ここは隣国の民として、知らないふりして黙ってて上げなくちゃ。

――テオン~!!


「玄武を助けるために、男には命取りの緋陵に入り、炎の鳥が住むという"溶岩"に行かなきゃならない。その溶岩がどこにあるのかはわからない。緋陵では、数年前に朱雀殿の後ろにある火山が軽くだけど噴火したらしいし、溶岩というものは沢山緋陵にあると思う。

その"正解"の溶岩に行くには、当然朱雀の祠官と武神将の知るところになり、僕達が歓迎されるとはまるで全然思えない」


 腕組みをしながらのテオンの強い語調に、ユウナとサクはうんうんと同意して頷いた。


「そのため、女装をしないのであれば、数日後に開催される武闘大会の飛び入りの参加者のふりをして、堂々と緋陵の中枢に入るしかない。それ以外の方法では、結界で張られているらしい緋陵ではかなり難しい」


「サクとシバの力を合わせて強行突破は……」


 ユウナの言葉に、サクは気怠げに首を横に振る。


「イタ公曰く、神獣同士には盟約という掟があるみてぇで、それによると他国の神獣が干渉してはいけねぇんです。それをしたから、イタ公は今眠り続けている。

だから神獣の力を持つ俺達も、他国での突破なんて俺達事情でそんなことしでかせば、イタ公がさらに窮地に追い込まれるだけではなく、ゲイの再来を控える蒼陵で、青龍までもが同じ目にあって眠っちまう」


 神獣の加護なしでは、蒼陵は危険だと…サクは続けて言った。

 青龍がいるからこそ自分達は蒼陵を背にして来れたのだと、仮にゲイが再来したとしても、青龍が時間稼ぎをしていれている間に、対抗手段になるはずのイタチを、早々に目覚めさせ帰還したい、と。

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