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吼える月
第31章 旅路 ~第三部 朱雀の章~
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「ねぇテオン。なんで朝からシバ、怒ってるの?」
朝が来て、朝餉をとって。
それでも機嫌が直らず、なにかにつけてサクに噛みついているシバを見て、ユウナはこっそりテオンに聞いた。
「ん……まあ色々。だけどそれはシバ本人には聞かないでね?」
テオンは苦笑する。
「あら、さっき聞いちゃったわ。そうしたら余計に機嫌悪くなっちゃって。シバに聞いたことって、そんなにいけないものなの?」
「……まぁ、お姉さんは寝ていたんだし。……そう、寝ていたとわかってはいるけれど……僕のを"ちっちゃい"……」
「?」
ユウナは、突然にずずんと落込んだテオンを見て、言った。
「テオンがちっちゃい? ……なにかしら。器、とか?」
それは独りごとだったのだが、さらにテオンが落込んだ。
「いいよ、僕だって知ってるし。祠官たる器がないから、青龍に認められていないことくらいは。そうだよ、青龍に認めて貰うためにも、早くイタチちゃ……いや、神獣玄武を……って、あれ?」
周りに誰もいないことに気づいて、顔を上げたテオンは周囲を見渡した。
「おおい、テオン!! もう出発するって何回も言ってるんだから、さっさと来い!! なにもたもたしてんだ?」
テオンがいる位置より、高いところにある岩の上から叫んだのはサク。
テオンがひとりの世界に閉じ籠もって落込んでいる間、他の三人は既に旅の支度を終え、この場を後にしていたのだった。
「テオン、早く~。うふふふ、ここから見るとテオンがちっちゃく……」
「ちっちゃい言うな!!」
傷心のテオンは一気に岩をよじ登ってきて、あっと言う間に三人に追いついた。だが元々体力がないテオンはその場でへばり、シバから貰った水を飲んで回復するまで、軽い休憩となった。