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吼える月
第31章 旅路 ~第三部 朱雀の章~
勢いよく言い争ったおかげか、前日より早い動きで、陽が真上にくるまでになんとか一行は頂上についた。
まず最初に頂上の高さとなる岩場に行き着いたサクが、朱雀の街並を背にしたまま、ユウナを持ち上げるようにして引き揚げた。
「姫様、随分と岩が熱くなってきましたが、足、大丈夫ですか?」
「ええ、サクが靴底をちゃんと直してくれたおかげで、大丈夫」
サクに抱きつくようにして、頂上に行き着けたユウナの横では、サクと同じようにテオンを引っ張り上げたシバがいる。
「テオン、息上がってるが大丈夫か?」
「はぁはぁ、これくらい大丈夫だよ。祠官になってでっかい男になるためには、これしきのこと……」
そしてテオンが顔を上げて、目に広がる景色を見た。
そう、一行でテオンが初めて、誰もが書物や口伝しか知り得ない、朱雀の国の中枢を見た――
「ええええええ!?」
……はずだった。
「おい、どうしたテオン」
シバだけではなくサクもユウナもテオンを見る。
そして、テオンの視線の先を追って、絶句した。
「朱雀の民や朱雀殿は、どこにあるのさ!」
そこには各々が思い描いていた風景はなかった。
街並の代わりに、岩の上に一面に広がっていたのは、砂。
「はああああああ!?」
サクの驚いた声がよく響き渡るのは……砂漠だった。
「溶岩すら見えねぇ……。どうするんだよ、どこに炎の鳥にいるのかわからねぇ。祠官や武神将だけではなく、朱雀の民はどこに行ったんだ!?」
玄武たるイタチを助けるために許された刻は、あと7日――。