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吼える月
第31章 旅路 ~第三部 朱雀の章~
目覚めてサクがいたことに喜びを感じた……そんなユウナの事情を知らないサクは、ユウナがサクとした口づけ"もどき"を、なかったことにしたいのかと推し量ると同時に、治療で交わった後ような……男としての意識が芽生えているかと様子を窺っていたのだが、ユウナはいつも以上の溌剌とした魅力を振りまくだけで。
――おはよう、シバ、テオン。今日も一緒に頑張りましょうね。
ユウナがご機嫌な理由が、サクがした口づけを忘れているからだと思えば非常にやるせない。
「俺が悪い。それは本当に悪い。だからよかったと思うべきかもしれねぇけど……だけど、だけど…複雑……。せっかく姫様と普通に接することができるようになったというのに、なんだよ、このがっくり感……」
「サク? なにをぶつぶつ言ってるの? まるでお……」
「お年寄りでねぇです! 俺は健康でまだまだ未来がある若者です!」
「そんな元気があるのなら大丈夫ね。なんだかわからないけど、今あたしがとっても元気なのは、サクと仲直りしたのと、寝る前の気持ちよさからだわ。ねぇサク、あたし、なにをして気持ちよくなったのか、わかる? 薬草とか? 今日もそれしたいわ」
「駄目だ!!」
それを叫んだのは、横で岩に座ってテオンを見守っていたシバ。
「行くぞ、時間は限られているんだ!!」
青龍刀を背中に背負い、言い捨てられた正論にて、休憩は強制終了。
「でっかい男になるんだ。絶対お姉さんに認めさせてやる」
呪文のように唱えながら、よじ登るテオンの声に、
「テオン。もう握らせねぇぞ」
「え、サク。握るってなに?」
「朝からそんな卑猥な話はいいから! テオン、蒼陵の民の誇りにかけて、玄武の民の卑猥さに染まるな!!」
「え、卑猥? 失礼ね、シバ。サクはやらしいけど、あたしはやらしくは……」
「姫様は自覚ないだけです。姫様が俺におねだりした時なんて……」
「だから、やめろって言ってるんだ!!」
「……お兄さんの片想いなの、本当に……? なんなのこのふたり……」