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吼える月
第32章 多難
 


 ふたりの役に立てると信じてやまないふたりは、遠目で見た怪しげなものがいるところ周辺にまで飛んできた。


 ユウナは鷹の背に乗っているが、テオンは慣れた方法……腰を爪にひっかけて貰っているため、ユウナよりじっくりと砂漠を観察できる。


 テオンが見やすいように、鷹は低空でゆっくり移動する。


「どう、テオン。近くで見て、変化ある? こっちは、上から見る限りではどこまでも変わり映えないけれど」


「う……ん、僕の方も。でも確かになにかが現れて移動したりして消えたよね」


「ここじゃないどこかに行ったのかしら? ワシちゃんはなにか変なものが見える?」


 ぴぇぇぇぇ……。


 鷹は頭を横に振った。


「やっぱりさ、蠍来ないよね、こんなに近くにいるのに」

「うん、あたしもそれを思ったわ。砂を踏まないとだめなのかしら」

「ねぇ、ワシ。僕ちょっと砂を触るから、触ったら高く飛んでくれるか?」


 ぴぇぇぇぇ~。


「じゃあ行くよ、いち、に……」



 さんでテオンが砂を手で触れワシは大きく飛び上がったが、変化がない。



「どういうことだろう。見られているから、蠍が出てこないの? それとも蠍はみんなお兄さんとシバのところに移動したとか?」


 その時テオンは、変化を見つけた。


「砂が、わずかに舞った!」

「羽ばたきではなくて?」

「それだったら周辺がわかりやすく砂が跳ねるよ。手で触れるくらいのところで、止まっててくれる?」



 ぴぇぇぇぇぇ。



 テオンは、砂が舞ったように思った場所の砂を、慎重に押した。



「………」

「………」



「ぶへぇぇぇぇん!!」



 おかしな音とともに、砂が高く舞った。

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