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吼える月
第32章 多難
「……ということだ。俺は玄武の武神将として姫様は、俺がイタ公の了承を得て、ちゃんとした儀式で誓いをたてた、正当な玄武の祠官としてイタ公を助けねばならないし」
「まっ、サクったら!」
「こっちは次期青龍の祠官候補と武神将候補として……」
「おい、俺は!」
サクはシバの口に手をあてて続ける。
「青龍直々の頼みでイタ公を助けるためにここに来てくれている。あと七日でイタ公を助けねぇといけないんだ。炎の鳥はどこに……」
ラクダはやるせなさそうな息を漏らした。
『我もな、よく白虎との喧嘩をその堅い甲羅で止めてくれた玄武を助けたいのは山々なのだ。だが青龍が言ったのは、正確ではない』
「え?」
一同はラクダを見た。
『正確なのは、"神獣朱雀の祝福を受けた、炎の鳥の涙"だ』
つまりは――
『我は力がないのだ。祝福をしたくてもそれができぬ。それに炎の鳥というのは、我に関係するものを緋陵の祠官と武神将が名付けた、彼女たちの隠語なのだ。本当に炎の鳥が居るのか我はわからぬ。神獣とはいえ、すべてを見知るわけではないのだ。
我に神獣の力があるのなら、炎の鳥とやらがなにかわかるだろうが、我には力があらぬ。ただ溶岩の位置は覚えておる。が、この砂漠であるのなら、たとえ位置がわかっても、砂に埋もれて……』
現状況ではイタチを助けられない。
「できるだろうが」
だがサクは諦めない。
「お前が朱雀の力を取り戻せばいいだけだろう?
俺達は、お前を助けに来たんだから」