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吼える月
第33章 出芽
「抵抗がねぇということは、俺が姫様を触ってもいいんで?」
ずいと顔を近づけたサクとユウナの距離はぐっと近づく。
「こうやって、距離をなくしても?」
「!」
まるで口づけようとしているかのように。
だが触れずに止まる唇の上で、熱っぽいサクの目がユウナを射貫く。
「俺は姫様に触りてぇです」
「……っ」
瞳が揺れたのは、どちらが先か。
「髪も身体も、心も触れてぇ。俺だけのものにしてぇんです。誰にも触れさせたくねぇ、リュカにもシバにも他の男にも」
独占欲を吐くサクの唇が、ユウナの耳に向いた。
熱情を鼓膜に吹き込みながら。
「お前は俺にそう感じたことはねぇのか? ……ユウナ」
「!!!!!」
熱を帯びた妖艶な眼差しが近づいてくる。
ユウナはサクの目を凝視したまま、身を強ばらせた。
身体の外両側につくサクの手。
覆い被さる、サクの身体。
「いいですね、何も見ずに俺を意識して……」
その時、ユウナの身体ががくんと下に落ちるような衝撃と共に、
ゴォォォォォォ!!
なにかが勢いよく降ってきた。同時にユウナは咳を繰り返す。
「なに、なに!?」
「……蠍が砂の中に入りました。このまま降下するみてぇですから、俺に捕まって。何も見ねぇで下さい。目と口を閉じて」
サクが動揺している様子はない。サクは先に知っていたのだ。覆い被さったのは、自分にかからないように砂避けになってくれているのだとわかったユウナは、ふとサクの熱い言葉も「何も見ない」ためのものかもしれないと思った。
だとすれば――。