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吼える月
第33章 出芽
「演技だったの!?」
「んなわけねぇだろ、だから目と口閉じろ!!」
ユウナの目が涙で潤んだのは、砂埃なのかサクの怒声なのか。
「俺の首に掴まれ。だけどイタ公を落とすなよ!!」
ユウナは何度も頷いて片手でイタチを支えて、反対の手でサクの首に捕まると、サクの手がその胸に押しつけるようにユウナの後頭部に添えられた。
ゴォォォォォォ!!
サクの目が険しく光る。
激しい砂の雨が終わったのを感じ取ったサクは、砂埃の中ユウナの腰を引き寄せるようにして共に上体を起こし、勢いはないもののまだ降る砂がユウナにかからないように、大きな身体で身をねじるような体勢をとった。
そして背に降り積もった砂を落としながら、ラクダの元に行く。
「まだ寝てるのか。起きろ、ラックー!!」
砂に埋もれたラクダはびくりともしない。
「え、砂で圧死とか!? 冗談じゃねぇ、起きろ、ラックー!!」
サクが頬を叩いても起きなかったが、砂から顔を見せた鼻の穴に、上から砂がその下底に落ちた途端、ラクダは飛び起き上を仰ぎ見た。
ぶへぇぇぇぇぇぇ!!
それはユウナがテオンと聞いた、くしゃみの声。
大きな鼻の穴から花火のように砂が混ざった鼻水が高く打ち上がり、砂埃に塗れていた景色を切り裂くと、その一部が現れたのだった。
「これは……」
上に続く石の壁面。
そしてその石壁には、鳥が飛んでいるような、山になった線が横にふたつ連なる模様が刻まれている。
これは――。
『朱雀の模様。つまり我を称える模様だ』
「どういうことだ、砂の下にこんなものが……」
片手でイタチを撫でて砂を払い落としながら、反対の手でサクの服の裾を掴んだ、ユウナが言った。
「この模様があるということは、倭陵の民の仕業よね。もしかするとこれを作ったのは……」
「緋陵の奴らか!? じゃあここに、緋陵の奴らがいるというのか!?」
いるのだろうか。
砂に埋もれた、地下に――。