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吼える月
第33章 出芽
「はあああああ!? 神獣文字知ってるのは、祠官や武神将の秘技のひとつなんだよ!? しかも朱雀の、なんでユエが……」
「じゃーん! 『神獣縁起』!」
「なんでそんなものを……」
「神獣文字は、神獣のことだよ? 人が神獣文字に力がこもる方法を作り出したんじゃないよ。それぞれの神獣が、教えたんだよ。だったら、この中にあるものが基本! はい!」
半ば押しつけられるようにして、本を受け取ったテオンは複雑な顔をする。
「イタチちゃんは神獣なんだよ、イタチちゃんを助けたいなら、神獣のご本も必要になるかなって、ユエ、ちゃんと用意してたの。偉いでしょ!」
褒めてといわんばかりに胸を反り返す。
「その本は、こんな子供でも簡単に手に入るものなのか?」
「うん、シバちゃん! 青龍殿にほっぽられてた!」
「これ、青龍殿から盗んだの!?」
「きゃはははは。ご本は使わないと意味がないんだよ。テオンちゃんも読んでも思い出さなきゃ。神獣文字が書かれてある頁を。ちゃんと朱雀についても書かれてあるのに」
「う……っ」
「読めれば出来るでしょ、ここの扉を開けること」
「いやだから、神獣の力がなければ……」
ユエはすくりと立ち上がり、テオンを見た。
「ねぇ、テオンちゃん。朱雀の祠官は、朱雀の力を持たないんでしょう? テオンちゃんと、一体なにが違うというの?」
「え……」
「テオンちゃんは言ってたよね、武神将と祠官の協力が必要って。なんでひとりでしようとするの? ここにいるのは、蒼陵国の祠官の息子と武神将の息子だよ? シバちゃんには青龍の力があるんでしょ?」
「あ……」
ユエは微笑んだ。
「力がない朱雀の祠官も武神将と協力できたから、この符陣がまだ生きているんでしょ? 力のない祠官が関わって描かれたものなら、シバちゃんと協力すれば、テオンちゃんが理解してなんとか防ぐことができるはずでしょう?」
年不相応の、大人びた顔で。
「テオンちゃんは、諦めるの? 神獣の力がないから、ここを突破出来ないと。この先に溶岩あったら、テオンちゃんのせいでイタチちゃんが瀕死になっちゃうんだよ? そう思わない、鳥さん」
ぴぇぇぇぇぇ!!
それはユエの賛同のような鳴声だった。