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吼える月
第34章 連携
「どうすれば、これがヨンガのものかわかる?」
『棺なら、名前が彫ってあるはずだ』
するとユウナが答えた。
「だったら、あの扉の両側にちょっと光っている部分がそうなのかしら」
「そう言われれば。符陣よりもっと微かな光ですが……」
『なんと、そんなものまであるのが見えるのか』
「読めないわ、これがきっと蠍が言った文字よ!」
「ラックー、読めるか?」
するとラクダはそれを見て、答えた。
『ああ、これは神獣文字。そしてこの不規則な文字の並びは、おそらくは、嘆願の儀がなされているのかもしれぬ。我に知られずに、或いは……』
「誰かが、ラックーの記憶を消すように嘆願したのか」
ラクダとこくりと頷いた。
「ラックーをラクダにした第三者の存在がいるのは間違いねぇだろう。だとすれば、その嘆願の儀がラックーに関することなのかどうかだな。どちらにしろ、この奥がどうなっているかわからねぇから、この扉を開いて進まないといけねぇ。……ヨンガは俺の叔母だ。幾ら狂乱したとはいえ、墓を暴きたくはねぇが、イタ公を救うのに必要ならば四の五言ってられねぇ」
サクの言葉に、ユウナは頷き、ラクダに訊いた。
「ラックー、なんて書かれているの? ヨンガの墓だって?」
『……』
「ラックー?」
『読み方を忘れた』
「はあ!?」
『知識人気取りする白虎に対抗して、我は嘆願する誓文を難しくしていたのだ』
「なにお前難しくするんだよ!」
怒るサクを制するように、ユウナが尋ねた。
「だったら、暗号を解かなきゃ文字が読めないということ?」
ラクダはそうだと、項垂れた。
『だ、だが……解く糸口は覚えておる』
「教えてくれる?」
『それは緋陵に伝わる、童歌だ』
そしてラクダは歌い始めた。
『すざくのはねはうらおもて わがくにはかがみとなりかがみはわがくにとなる。わがちからはみずにおおわれ みずはちとなす すなわちわがちからほかにおよばず わがちからもちとなすが もとよりちはきとなす
われのごうかによりてきぎのはきよにかくれ、ねむりもまたやみにきゆ たはし のはむとなり なんじらのすはわがてにおちる
わがおはめとなり わがあたまはおにむくが、しゅうえんはかいしとなる』
まるで呪文のような不可解な歌を。