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吼える月
第34章 連携
「まあ、ラックーは見えないの?」
『然り。お前達に言われて、扉のところに符陣らしきものがあるとわかったほどだ』
「でも符陣って、神獣の力を必要とするんだろう? ラックー抜きにそんなことできるのかよ」
『……我はなにか、肝心なことだけを忘れている気がする。我は嘆願の儀のやり方も覚えているというのに、ヨンガがどうなったのかもわからぬ』
「嘆願の儀ってなんだ?」
『四神獣は、それぞれ認めた者の願いを絶対的に叶えることが出来る"嘆願の儀"というものを定めておる。それらは文書にて、或いは口承にて、次代祠官や武神将に伝えているはずだ』
「なんかお前、本当に神獣みたいだな」
『朱雀だ! 信じておらなかったのか!?』
「いや、なんか嬉しいんだよ。俺が信じたお前が、そうやって朱雀っぽいことをしてくれるのがさ」
『だから我は』
「わかっているわ、ラックー。朱雀なんでしょう?」
ユウナに微笑まれて、ラックーはひっくり返りそうになり、サクが慌てて受け止め、その耳に囁いた。
「姫様は渡さねぇからな!?」
『我は神獣であるぞ。人は我が守る種族であるぞ』
「……お前、人型とかとったことがあるのか?」
『おお、なぜそれを! 我らは女神ジョウガに拝謁する時は、人型をとる。まあ、玄武よりは美形だろうがな、我は玄武より年上であり華やかさを好むゆえに。玄武は質素すぎるのだ。あやつめ、ジョウガの前でも着飾ることをせぬ』
「……っ!!」
サクは、イタチの超絶美形の人型を思い出しながら、白目を剥いて後方に卒倒しそうになる。それをユウナが支えた。
「どうしたの、サク?」
「い、いえ……、色々突っ込みどころが多すぎて、なにを口にしていいのかわからなくなっただけです……」
「そう?」
『話が脱線したな。我はこの存在を知らぬ』
ラクダは石の建物を見る。
サクの母親、サラの妹が眠るかもしれない石棺を。