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吼える月
第34章 連携
「で、ここ緋陵なんだけど、怒りだの復讐だの鏡だの命だの、そんな物騒なのはさて置いて、"民に口承される童歌の意味を解いた"とあるだろう?
もしこの石の建物の読めない神獣文字が、この嘆願の儀にそって描かれているのなら、あの不規則に並んで意味をなさない文字は、緋陵の童歌があれば意味がわかるかもしれない。嘆願の儀で符陣に力が注がれてこの状態であるのなら、その嘆願内容を暴いてそうさせなければいいと思うんだ」
「しかし朱雀が力を貸しているんだろう?」
「そりゃあ他の神獣なら駄目だけれど、この国の神獣は力をなくしている。なくしているのに嘆願の儀で符陣が効力をもっているのなら、それなりのからくりがあるはずだ。僕はこう思うんだ」
テオンはシバに言った。
「もし何でも叶える神獣に、神獣から力を奪うこと、或いは神獣の記憶を奪うことが目的であったら、どうなる?」
「それがラクダ、ということか?」
「うん。ラックーが朱雀なら、簡単にラクダに変えられ記憶と力を奪われたというのは人の力とは思えない。仮に第三者の犯人がいるとしても、それは朱雀より力が上だということだ。そんな人間、そう簡単にはいないよ」
「朱雀が己の力により、ラクダになった、か……」
「まあ可能性のひとつだけれどね。嘆願の儀がいまだなされ続けているのなら、その力はどこから来てる? ここまで持続出来るものか? 嘆願の通りにならなかったら、どうなる? だから僕は、あそこに書かれた不規則な神獣文字は、嘆願の儀のものとして、まずは内容を知らなきゃと思う。それが符陣の効力を消すものだとしたら、一石二鳥。
あの符陣はシバだけの力をなくすのが目的ではないだろう。仮にシバをここに残して僕だけが進んだとしても、罠があると思う」
シバは、テオンが向いている符陣を見た。
少しだけ、白く光る符陣はシバの力を痛みで弾こうとする。その符陣が入り口を守るのは奇妙な石の建物だ。