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吼える月
第34章 連携
「あの石のはなんだろうな」
「うん、巨大だよね。あんなに高いところから石肌が見えるし。どこまで続いているのかもわからないけど、無意味なものではないと思う」
「これは、あいつらのところにも続いているのか」
「お兄さんが行き着いたところに、こうやって石の部分があっておんなじように不規則に並んだ神獣文字があればね」
「あいつらは解き方がわかるんだろうか」
「ラックーの記憶だよね、問題は」
シバはあの間抜けた顔のロバが、戦力になるとは到底思わなかった。
だがサクが朱雀だと信じたのは、意味があると思う。
サクは基本馬鹿で卑猥だが、その直感は正しいことはシバも認めていた。そのおかげで、ユウナ共々、黒陵から生き延びてこられたのだろうから。
そして蒼陵もまた。
「ふう、問題は『神獣縁起』に書かれている、童歌なんだよね……。それがどこにも本に載っていない。それがわかれば……」
ふんふんふーん♪
陽気な歌声が続いている。
「なあ、ユエはなにをしているんだ?」
「え、ユエ?」
テオンは本を渡されてすぐ読みふけったため、ユエの動向は気づかなかったらしい。シバに言われて、ようやくユエがひとりでなにかをしていることを悟った。
「そういえばユエ、お前にその本渡す際、なにやら地に書いて変換表とか言ってたな。その変換表とやらは、その本にあったのか?」
「いや、それを探しているんだけれど……」
「だったらユエが書いているのはなんだ?」
テオンがユエに声をかけようとして、ぴたりと動きを止めた。
「すっざくーのはーねは、うーらおーもてー。わーがくーにっはーかっがみーとなーり、かっがみーはわーがっくーにっとなーる」
「何の歌だ? あの歌に合せてなんか書いてないか? あ、また繰り返したな」
「しっ、ちょっと黙って」
テオンもまた、ユエの歌に合わせて、指でなにやら書き始める。
シバは、テオンとユエを見守ることにした。
ユエは同じ部分を二度繰り返し歌っているらしい。
旋律が聞き慣れた最初に戻ったのを聞いて、テオンがユエを制した。
「ユエ、それ……朱雀と出てくる歌はなに?」
既に答えを知っているような表情でテオンが聞く。
「童歌だよ、緋陵の」
ユエは無邪気に答えた。