この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第34章 連携
「うんうん、わかった。間違っただけだね、うん。で、ユエの言う『変換表』ってなに?」
「お歌!」
ユエは、目を輝かせた。ご機嫌は直ったらしい。
「歌を全部書こうとしたの?」
ユエは頭を横に振った。
「変換表! あの子が言ってたの!」
シバが目を細めた。
「ユエが歌ったあの歌が変換になるの?」
「うん!」
「それがその緋陵で生まれて君に歌を歌ったあの人がそう言ったの?」
「うん!」
「どうやって?」
「そのまんま! そのお歌の通りに書けば、あの文字がわかるの!」
ユエは石の扉を指さした。
・
・
・
・
「ユエが歌っていたのを、全部わかるように書き出してみた。意味がどうとでもとれるところは、漢字にはしていないけれど」
『朱雀の羽は裏表。我が国は鏡となり、鏡は我が国となる。
我が力は水に覆われ、水は地となす。即ち我が力地には及ばず、我が力も地となすが、もとより地はきとなす。
我の業火によりて木々の葉は夜に隠れ、眠りもまた闇に消ゆ。田は死、野は無となり、汝らのすは我が手に落ちる。
我が尾は目となり、我の頭は尾に向くが、終焉は開始となる』
「意味はさっぱりだ。羽が裏表? 鏡は我が国? 水だの地だのは相克関係だと思う。火で皆がなくなったとしても、"す"って? 終焉は開始?」
テオンは腕を組んでうんうん唸り始めた。
「石に刻まれている神獣文字はどんな言葉なんだ?」
テオンは地に書き始めた。
てなとりとむちでいろむむうよりちのもるげしまさめみやがわ
意味のわからない、文字の羅列――。
「これが意味をもつのかね、意味がわからない童歌で」
遠いところを見ていたテオンが、やがて顔を両手で挟むようにしてパン!と叩くと、理知的な光を目に宿して取りかかった。