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吼える月
第35章 希求
「ヨンガの……嘆願のせいか?」
武装した兵士ごと眠りにつかせたのだろうか。
「だけどそんなこと、書いてなかったわ!」
「テオン達のところに、書いてあったのか……。それとも血の呪いとかいうものに連なるのか……。それとも……」
ヨンガ以外の誰かが、兵達を砂に埋めたのか。
蠍を消すことで、死者を生き返らせることが出来るようにしたのは、誰だ?
ヨンガか、別の者か。
……サクは、気づいていた。
シバとの間に生じたような、特殊な共感覚とも言える、神獣の力の介在。
「ラックー。朱雀の力が発動してる」
『なんと』
ラックーは感じなかったらしい。
「サク。石棺の扉の赤い光が、強くなった気がする」
ユウナに言われてサクも気づく。
「これは、棺を作ったものの意志か……」
カチャカチャと音を鳴らして隊列を組む白骨達は、五十体ほど。
それでもまだ、増え続けようとしている。
「ラックーは、死んだ者達を生き返らせることが出来たの?」
ユウナの声。
『やろうと思えば出来る。だが、神獣は、ひとの生き死にに関与してはならぬ。祠官や武神将達にそれを許してはならぬ。我がこの姿なり、力を失うと同時に、我の力は悪用されたやもしれぬ』
ヨンガに。
或いは、行方がわからぬ朱雀の祠官に。
「サク、どうするの?」
ユウナの声と同時に、サクは不敵に笑って言った。
「勿論、これくらいなんとかします。……この程度なら、あの金色男……ゲイの方が強い力を持っていた。それに比べれば、全然いい」
白骨が動き出すと同時に、サクは軽やかに跳躍しながら、鞭のようにしなる七節棍で、一体の白骨に巻き付かせたまま、ガツンガツンと近くの白骨にぶつけるようにして骨を壊していった。
七節棍はサクの意志で縦横無尽に動きながら、サク自身は舞っているかのような鮮やかな動きで、ひらりひらりと白骨の攻撃を躱していく。