この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
吼える月
第35章 希求
臆することない堂々としたサクの動きに、ユウナは興奮する。
「見てよ、ラックーちゃん! 玄武の武神将は凄いでしょう!? 最強の武神将であるハンにだって負けない、いやそれ以上の逸材なの、あたしの武神将は!」
『……なんと』
「ね、ワシちゃんは知っているものね。サクは凄いわよね!」
ぴぇぇぇぇぇっ!!
それまでこわごわと身体を縮ませていたワシは、サクの戦いぶりを見て安心したのか、得意げに胸を反らす。
……だが、サクが見事な動きで骨を壊しても壊しても、また蘇る。
玄武の力は依然発揮することは出来ない。
このままだと、本当に体力戦になる――
「サク……」
ユウナは考える。
自分にも出来ることはなにかと。
主として幼なじみとして、それ以上の近しい存在として、サクの役に立ちたい――。
なにか解決策はないだろうか。
なにか、サクを助けることは!?
ユウナは観察する。
白骨が現われる瞬間、石扉の赤い光が僅かに強くなっている事実。
つまりあの赤い光を、石扉の模様が創り出しているのなら、あそこを止めればなんとか出来るのではないかと。
……神獣の力によって守られたあの扉が、神獣の力を持つサクを弾くのであるのなら、神獣の力を持たない自分は、なにか出来ないか。
『これ、姫。どこへ行く』
「扉へ」
『姫の命にかかわる。戻ってこい』
「やってみなきゃわからないでしょ!?」
「姫様!?」
「ああ、サク。続けてて。あたしは大丈夫だから」
「ちょっ!? 姫様、危なっ」
ユウナは転がっていた頭蓋骨を持って、反射的に剣を振りかざした白骨兵士の頭を殴った。
すこーんといい音がしてそれは飛び、ラクダの頭にあたってラクダは蹲る。