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吼える月
第35章 希求
 

 臆することない堂々としたサクの動きに、ユウナは興奮する。

「見てよ、ラックーちゃん! 玄武の武神将は凄いでしょう!? 最強の武神将であるハンにだって負けない、いやそれ以上の逸材なの、あたしの武神将は!」

『……なんと』

「ね、ワシちゃんは知っているものね。サクは凄いわよね!」

 ぴぇぇぇぇぇっ!!

 それまでこわごわと身体を縮ませていたワシは、サクの戦いぶりを見て安心したのか、得意げに胸を反らす。

 ……だが、サクが見事な動きで骨を壊しても壊しても、また蘇る。

 玄武の力は依然発揮することは出来ない。

 このままだと、本当に体力戦になる――


「サク……」


 ユウナは考える。

 自分にも出来ることはなにかと。

 主として幼なじみとして、それ以上の近しい存在として、サクの役に立ちたい――。


 なにか解決策はないだろうか。

 なにか、サクを助けることは!?


 ユウナは観察する。


 白骨が現われる瞬間、石扉の赤い光が僅かに強くなっている事実。

 つまりあの赤い光を、石扉の模様が創り出しているのなら、あそこを止めればなんとか出来るのではないかと。

 ……神獣の力によって守られたあの扉が、神獣の力を持つサクを弾くのであるのなら、神獣の力を持たない自分は、なにか出来ないか。


『これ、姫。どこへ行く』

「扉へ」

『姫の命にかかわる。戻ってこい』

「やってみなきゃわからないでしょ!?」


「姫様!?」


「ああ、サク。続けてて。あたしは大丈夫だから」

「ちょっ!? 姫様、危なっ」


 ユウナは転がっていた頭蓋骨を持って、反射的に剣を振りかざした白骨兵士の頭を殴った。

 すこーんといい音がしてそれは飛び、ラクダの頭にあたってラクダは蹲る。
 
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