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吼える月
第35章 希求
「やば……」
サクの気がそれたと同時に、再び朱雀の力が押してきたため、サクは集中する。
『我、汝らに力を貸したり。だが今は我の力、長く続かず。この場だけの助力と考えよ』
「なんで青龍が、ここに来ているの?」
ユウナの疑問の声に、サクはにやりと不敵に笑った。
「シバとテオンが、青龍を呼び出したんですよ、姫様。あいつらがっ、正式な祠官や武神将ではねぇくせに、青龍を動かしたんです!」
サクの顔には多大なる歓喜と信頼に満ちた色が浮かぶ。
「すげぇよ、あいつら! 俺もやらなきゃなんねぇな。青龍、この場限りでいい、助かる。シバに力を貸してやってくれ。それと、シバに変わってくれねぇか」
『承知した……サクか?』
低い声からシバの声に変わる。
それはギルで慣れているために、ユウナも驚く要素ではなかった。
「ああ、シバに変わったな。そっちはどうだ」
青龍の力を通して、サクはシバと会話出来ている。
そのことがユウナは驚いて。
『符陣からの朱雀の力が強まった』
「そうか。じゃあ頼む。俺が導くから、俺と同じ力に調節しろ」
『簡単に言うな』
「出来るだろうさ。青龍を呼び出したくらいなら。いいからやれ」
『……くそっ』
ユウナは、サクが相手をしている赤い光の勢いが少し弱まってきたのを感じた。
もしかすると、朱雀の力は全体量からそれぞれに配分されているからなのかもしれない。
だとすれば、シバが危機に陥る分、サクは楽になる。
……それもどうかとユウナは、ため息をついた。
それでも。
サクのあの顔を見ていれば、サクもシバもやれる気がするから。
だとすればユウナはただ祈るだけだった。
「神獣玄武。どうかサクとシバに力を」
襟巻きとなっている白イタチを撫でながら、必死に祈る。